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【簿記3級】対策:経過勘定(前払費用・前受収益・未払費用・未収収益)
簿記3級でつまづきやすい経過勘定の解説です。第3問の決算関連において決算整理事項として出題される経過勘定の対策を想定しています。本ページにおいては、特に記載のない限り決算日は3月31日とします。
経過勘定とは
前払費用・前受収益・未払費用・未収収益の4つを経過勘定といいます。経過勘定は日常生活ではあまり馴染みがないのと、会計期間(期)を跨ぐので、非常にわかりにくく苦手とする方が多いです。
前払費用
前払費用は何の費用なのかを明確にするために、「前払家賃」や「前払保険料」などと表記する場合がありますので、問題文の指示に従って下さい。
前払費用の意味としては、日常生活では家賃に例えると理解しやすいかと思います。例えば4月の家賃は前月の3月中に支払うのが一般的です。これによって4月に部屋を使う権利が発生します。
これを簿記として考えると、支払いをしたのは3月(当期)ですが、これによって発生した権利を実際に受けるのは4月(次期)なので、当期の費用として計上されているのはおかしい、したがって当期の費用からは除外しなければならないという考え方です。
したがって、3月に支払いをした時点では、
(支払家賃) | 1ヵ月分 (4月の分) | / | (現金など) | 1ヵ月分 (4月の分) |
と仕訳をしますが、決算において、
(前払家賃) | 1ヵ月分 (4月の分) | / | (支払家賃) | 1ヵ月分 (4月の分) |
と整理します。以下決算整理における例題です。
例1)家賃の前払分が¥20,000ある。
(前払家賃) | 20,000 | / | (支払家賃) | 20,000 |
前払分がいくらあると具体的に提示されているタイプで、その金額を前払費用として処理するだけです。
例2)当期8月1日に家賃を向こう1年分支払っている。(決算整理前残高試算表の支払家賃は¥120,000)
この場合は、まず当期分と次期分がそれぞれ何ヵ月なのかを考えます。当期8月1日に支払っているので、8月~3月までの8ヵ月分が当期、4月~7月までの4ヵ月分が次期となります。
次に次期分である4ヵ月分の支払家賃を前払家賃として処理します。12ヵ月分で¥120,000なので、1ヵ月分は¥10,000、4ヵ月分は¥40,000となります。
(前払家賃) | 40,000 | / | (支払家賃) | 40,000 |
例3)家賃は毎年8月1日に1年分支払っている。(決算整理前残高試算表の支払家賃は¥800,000)
毎年〇〇しているというタイプの問題は、前期からまたがっているので単純に12ヵ月で割ればいいというわけではありません。
前期に費用の繰延べを行なった場合、今期首に再振替仕訳を行なうため、上記の例であれば、4月~7月までの4ヵ月分の家賃が今期分として計上されています。前期分の処理から仕訳をしていくと、以下のようになります。
前期8月1日 | (支払家賃) | 12ヵ月分 | / | (現金など) | 12ヵ月分 |
前期末 (決算整理仕訳) | (前払家賃) | 4ヵ月分 | / | (支払家賃) | 4ヵ月分 |
当期首 (再振替仕訳) | (支払家賃) | 4ヵ月分 | / | (前払家賃) | 4ヵ月分 |
当期8月1日 | (支払家賃) | 12ヵ月分 | / | (現金など) | 12ヵ月分 |
当期 決算整理前残高 | (支払家賃) | 800,000 (16ヵ月分) | – | – | – |
これによって¥800,000は16ヵ月分(1ヵ月50,000)ということがわかります。次期4ヵ月分(¥200,000)の家賃を前払い処理するので、当期の決算整理仕訳は
(前払家賃) | 200,000 | / | (支払家賃) | 200,000 |
となります。
前受収益
前受収益は何の収益なのかを明確にするために、「前受家賃」や「前受利息」などと表記する場合がありますので、問題文の指示に従って下さい。
前払費用では家賃の支払いを例にして説明しました。家賃を3月に前払いすることによって4月に部屋を使う権利が発生した、というものでしたが、前受収益は部屋を提供する側と考えてみて下さい。3月に前払いされた家賃を受け取ったことによって、4月に部屋を貸す義務が発生したということになります。
これを簿記として考えると、家賃(収益)を受け取ったのは3月(当期)ですが、これによって発生した権利を提供する義務があるのは4月(次期)なので、負債として次期に繰り越さなければならないという考え方です。
したがって、3月に家賃を受け取った時点では、
(現金など) | 1ヵ月分 (4月の分) | / | (受取家賃) | 1ヵ月分 (4月の分) |
と仕訳をしますが、決算において、
(受取家賃) | 1ヵ月分 (4月の分) | / | (前受家賃) | 1ヵ月分 (4月の分) |
と整理します。前受収益は、基本的な考え方としては前払費用と同じです。例題は省略します。
未払費用
未払費用は何の費用なのかを明確にするために、「未払家賃」や「未払保険料」などと表記する場合がありますので、問題文の指示に従って下さい。
前払費用と前受収益は家賃を例にして説明してきましたが、未払費用は利息として出題されることが多いので、ここからは未払利息を例にして説明します。
お金を借りた場合、利息が発生します。お金を借りる際にその期間に応じた利息があらかじめ差し引かれて貸し付けられるケースもありますが、一般的には月ごとや年ごとの返済のタイミングで利息も一緒に返済します。
例えば2月1日に借入期間1年間でお金を借りて、利息は1年後にまとめて返済するといった場合、支払いをしていないだけで当期の2月と3月の2ヵ月分は利息が発生しています。これは当期分の費用であって実際の支払時(次期)にまとめて費用とするのはおかしいという考え方です。
したがって決算においては、
(支払利息) | 2ヵ月分 | / | (未払利息) | 2ヵ月分 |
と、2ヵ月分を未払利息(負債)として計上します。以下決算整理における例題です。
例4)利息の未払い分が¥5,000ある。
(支払利息) | 5,000 | / | (未払利息) | 5,000 |
未払分がいくらあると具体的に提示されているタイプで、その金額を未払費用として処理するだけです。
例5)借入金(¥1,000,000)は当期8月1日に借入期間1年間、年利率3%、利息の支払いは返済時に行なうという条件で借り入れたものである。当期分の利息を適切に処理せよ。
この場合は、まず当期分と次期分がそれぞれ何ヵ月なのかを考えます。当期8月1日に借り入れているので、8月~3月までの8ヵ月分が当期、4月~7月までの4ヵ月分が次期となります。
次に当期分である8ヵ月分の利息を未払利息として処理します。利息が¥30,000なので、1ヵ月の利息は¥2,500、8ヵ月分で¥20,000となります。
(支払利息) | 20,000 | / | (未払利息) | 20,000 |
例6)借入金は前期の3月1日に期間2年間で借り入れたもので、利息は毎年2月末日に過去1年分を支払っている。当期分の利息を適切に処理せよ。 (決算整理前残高試算表の支払利息は¥11,000)
この場合はまず前期の仕訳から考えていきます。
前期2月末日 | (支払利息) | 12ヵ月分 | / | (現金など) | 12ヵ月分 |
前期末 (決算整理仕訳) | (支払利息) | 1ヵ月分 (3月の分) | / | (未払利息) | 1ヵ月分 (3月の分) |
当期首 (再振替仕訳) | (未払利息) | 1ヵ月分 | / | (支払利息) | 1ヵ月分 |
当期2月末日 | (支払利息) | 12ヵ月分 | / | (現金など) | 12ヵ月分 |
当期 決算整理前残高 | (支払利息) | 11,000 (11ヵ月分) | – | – | – |
これによって当期決算整理前残高試算表の支払利息¥11,000は、前期末に未払利息として計上した1ヵ月分の再振替分と、当期2月末に支払った12ヵ月分の差額である11ヵ月分(1ヵ月¥1,000)とわかります。当期3月分の利息を未払処理するので、当期の決算整理仕訳は
(支払利息) | 1,000 | / | (未払利息) | 1,000 |
となります。
参考)借入金(¥1,000,000)は当期の1月1日に借入期間1年、年利率3%で借り入れたものであり、借入時に1年分の利息が差し引かれた金額を受け取っている。当期分の利息を適切に処理せよ。
今までは利息を後で返済するタイプでしたが、今回は先に差し引かれた額を借り入れている場合です。結論からいえば、このタイプは前払費用(前払利息)になります。借り入れたときの仕訳は、
(普通預金など) (支払利息) | 970,000 30,000 | / | (借入金) | 1,000,000 |
となります。この利息¥30,000は12ヵ月分なので、1ヵ月分は¥2,500です。当期の借入期間は1月から3月の3ヵ月間なので、残りの9ヵ月間は次期の分です。したがって、9ヵ月分の¥22,500を前払いで処理処理するので、当期の決算整理仕訳は
(前払利息) | 22,500 | / | (支払利息) | 22,500 |
となります。
未収収益
未収収益は何の収益なのかを明確にするために、「未収家賃」や「未収利息」などと表記する場合がありますので、問題文の指示に従って下さい。
未払費用では利息の支払いを例にして説明しましたが、未収収益は利息を受け取る側と考えてみて下さい。当期5月にお金を貸し付けたが、利息を受け取るのは次期4月であるといった場合、5月~3月の11ヵ月分の受取利息(収益)はまだ受け取っていないだけであって当期の収益です。これを受取時(次期)に全額収益とするのはおかしいという考え方です。
これを簿記として考えると、利息(収益)を受け取るのは次期の4月ですが、当期5月~3月の11ヵ月分の利息を受け取る権利(資産)は発生しているため、これを当期分に計上しなければならないので、決算において、
(未収利息) | 11ヵ月分 | / | (受取利息) | 11ヵ月分 |
と整理します。前受収益は、基本的な考え方としては未払費用と同じです。例題は省略します。